グローバル人材開発部 部長 佐藤 泰美 氏
グローバル人材開発部 研修第一課 経営ユニットリーダー 辻 香奈美 氏
- 1to1コーチング導入のきっかけは?
- 佐藤 氏:
伊藤忠商事㈱では2003年から、全組織長約400名に対し多面観察を実施しております。これは、組織長が普段気づきにくい日常の人事管理、マネジメント行動を、組織長自身及び部下による観察結果のフィードバックを通じて振り返り、必要に応じて行動改善・能力向上を図ることを目的として導入されました(処遇への反映は一切なしとしております)。その後、2011年より、多面観察のフィードバックだけで終わるのではなく、会社として積極的に“ 個別のリーダーシップ強化”を支援すべく、希望者向けに「1to1コーチング」を導入しました。
- インテグラスを採用したきっかけは?
- 佐藤 氏:
他社と比較して、個別かつ丁寧にフォローいただける点や、型にはまったパッケージ化されたプログラムではなく、柔軟にカスタマイズいただける点が魅力的でした。
辻 氏:
運営面についても、多忙な受講者が多い中、コーチと日程調整・面談場所を決めることができ、受講者にとって融通が利く点も導入の決め手となりました。
- 導入効果について
- 佐藤 氏:
今年で導入3年目となり、毎年20名弱が受講していますが、受講者からは「“現場で迷っていること”や“第三者でないと見えないこと”について、コーチの方から適切なサポートをいただき、非常に役立っている」との意見が出ています。中には課会等にも、コーチに出席してもらうケースもあり、無意識の言動・行動について客観的なアドバイスをもらえる点も効果が高いと考えております。
辻 氏:
毎年開始(2~3月)後に異動時期を迎えることもあって、受講者のおよそ半数は結果として異動の対象となっています。1to1コーチングの個別フォローにより、異動前の仕事の整理や引継等がスムーズに出来たこと、また新しい職場で新たな人間関係を構築する時に、コーチからのアドバイスが非常に役に立った、などという声がありました。
それから、海外駐在の場合には、日程を合わせ、赴任前までにコーチングを終えて出発することや、赴任後においてもテレビ会議という形でコーチングを実施いただいたことなど、柔軟に対応いただき助かった、という声もありました。
多種多様なニーズに合わせ
“ それぞれの立場に適した形”
でフレキシブルフォローしていただけていると感じております。
- 今後の発展的な活用について
- 佐藤 氏:
異動時の引継だけでなく、約44%(約1,500名)の社員が海外駐在、または国内出向をしている弊社において、それぞれの立場に合わせた個別のフォローは非常に有効だと思います。
新しい職場環境における業務や人間関係など、マネジメントを実施するにあたり、海外赴任者や出向者向けのコーチングはニーズが高いと思います。
今後もあらゆるニーズに対応する型で実施出来れば良いと考えております。
- 今後の人材育成方針について
- 佐藤 氏:
商社にとっては、経営者人材の育成は従来からの課題であると認識しております。商社は多数の事業会社と共にグループ連結経営を進めており、いかにグループ全体で経営者人材を確保、育成していくかが重要となっております。
最近は、国際会計基準や内部統制など、経営が複雑化してきている為、単なる経営者人材ではなく「管理」経験のある経営者人材を育てていくことが新たな課題となっております。
現在は、事業管理やリスクマネジメント知識の向上のみならず、若手社員に管理部門の経験を付与することに注力しております。
現在、伊藤忠商事㈱では年間およそ160本(受講延べ人数=5千人)の研修を実施しており、グローバル人材についても育成強化を図っております。その中でも最高峰の研修として「Global Executive Program」があります。事前に360度アセスメントを実施し、エグゼクティブコーチと研修に参加しながら個々の“グローバルリーダーシップ”の開発を行うものです。
本社からは部長以上、海外からは事業会社のエグゼクティブが、研修にて徹底的に議論を交わし、その状況をエグゼクティブコーチが観察をしながら個々のリーダーシップについて、必要に応じてアドバイスをします。また更に、受講者が希望した場合は、必要に応じてその後4か月間コーチをつけ、個々のリーダーシップを引き出すという研修を実施しております。
ポイントは「グローバルな環境」という点です。参加者はエグゼクティブであることから既に各自のリーダーシップスタイルは確立されていますが、実際に語学だけでなく、グローバルな環境下で“リーダーシップを発揮できる人材”であることが重要であり、今後更にスピードを上げてグローバルリーダーを育成していきたいと考えております。
以前は経営者人材育成の為、知識型の「経営者スクール」や「成長戦略の為のワークショップ」など数多く研修を行っていました。現在は全体に網掛けをして画一的に経営者を育成していくのが困難となり、「いかに個々の能力を引き出せるか」に重点を置いています。そういった意味で今回の1to1コーチングによる多面観察のフォローアップは、最たるもので、能力を引き出すことが可能となり、社内でも期待が高まっています。
このプログラムを導入する際に気を付けている事は、“コーチングは押し付けることは出来ない”という点です。“自らコーチングを受けたい”という気持ちにならないと効果がでないと考えております。
一方、「コーチをつけて良かった」という評判が更に拡がり、コーチをつけて能力や強みを伸ばすことが能力開発における選択肢の一つとして定着すれば良いと考えております。